衆安在線財産保険(6060.HK)は中国初のネット専業保険会社として、2013年に設立された。騰訊HD(テンセント:0700.HK)、阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング:BABA/NYSE)系の金融会社であるアント・フィナンシャル、中国平安保険(2318.HK)などが出資する。
ネット専業で保険事業を展開し、18年の国内損保シェアは12位。自動車保険を除くネット保険では業界トップシェアを誇る。ビッグデータの解析や人工知能(AI)などを活用し、保険とテクノローを融合させたインシュアテックを推進。
「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が戦略投資家として、約600億円を出資、4.99%のシェアを持つ。
衆安在線財産保険(06060.HK)の株価
ネット企業などと提携し、ニッチ需要を取り込む戦略
自動車保険がメインの既存の損害保険会社と異なり、ネット企業と連携してニッチな保険を開発。顧客から得た保険料のうち、一定割合を受け取る仕組み。
保険料収入の約3割を占めるのが、アリババのネット通販サイト、淘宝網(タオバオ)や天猫(Tモール)で購入した商品に故障や欠陥が見つかった場合、返品送料を補償する保険です。
旅行予約サイト最大手の携程旅行網(シートリップ)向けには、飛行機の遅延・欠航時に発生するホテル代などを補償する保険を提供する。出発直前まで買えるプレミアム版では、最新の運航情報や天気予報などビッグデータを人工知能(AI)で解析し、きめ細かく保険料を設定する仕組みも取り入れた。
スマートフォン(スマホ)製造・販売大手の小米(シャオミ)にはスマホ破損保険を提供する。あらかじめインストールしたアプリで遠隔地から液晶の破損度合いを分析し、補償対象になるかを自動判定できる。ドローン最大手のDJIも事故発生時の被害をカバーする保険を投入した。
今後の成長分野として期待するのが医療分野。テンセントや小米とはスマホやスマートウオッチで毎日の歩数を測定し、翌月の保険料に反映する医療保険を開発。500万人以上のユーザーが利用している。糖尿病患者の血糖値データをとり、正常値を保てば保険金を加算する商品も始めた。将来は生命保険への参入も計画している。
いずれの商品も加入から保険金の支払いまでネット上で手続きが完結。「支付宝(アリペイ)」や「微信支付(ウィーチャットペイ)」など電子決済口座への保険金払い込みも選べる。
提携先 | 主な商品 | 保険料収入 |
---|---|---|
アリババ | 商品返送保険 | 18億元 |
シートリップ(CTRIP) | 旅行遅延損害保険 | 7億元 |
小米 | スマホ破損保険 | 0.4億元 |
DJI | ドローン事故保険 | ー |
テンセント | 毎日の歩数を測定する医療保険 | ー |
※ 2016年12月期
決算情報
業績推移
経常収益 | 純利益 | EPS(元) | |
---|---|---|---|
2015年 | 2,509.35 | 44.26 | 0.040 |
2016年 | 3,412.72 | 9.37 | 0.010 |
2017年 | 5,583.00 | -997.00 | -0.770 |
2018年 | 9,610.31 | -1,743.90 | -1.190 |
2019年 | 15,123.96 | -454.10 | -0.310 |
※ 単位:百万元
キャッシュフロー
15/12 | 16/12 | 17/12 | 18/12 | 19/12 | |
---|---|---|---|---|---|
営業CF | 300.55 | 853.39 | -709.79 | -1,279.10 | -1,214.82 |
投資CF | -4,662.37 | -1,355.92 | -6,310.00 | -4,938.15 | -361.30 |
財務CF | 5,595.02 | 280.87 | 11,269.60 | 3,384.65 | 2,031.52 |
現金同等物 | 1,374.90 | 1,153.24 | 5,260.26 | 2,426.83 | 2,914.82 |
※ 単位:百万元
主要株主
株主 | シェア(%) |
---|---|
浙江バ蟻小微金融服務集団股フン有限公司 | 13.53 |
騰訊控股有限公司 | 10.2 |
中国平安保険(集団)股フン有限公司 | 10.2 |
最近の動向/今後の見通し
衆安在線財産保険が発表した2019年の総保険料収入(中国会計基準)は前年比30.4%増の146億3500万元だった。逆算で導き出した2019年12月単月の総保険料収入は前年同月比70.1%増の17億8400万元で、月次ベースでは2017年9月の上場以降で最大。
2019年は4月の伸びが9.3%に鈍化するなど前半に苦戦したが、9月以降は前年同月比の伸びが40%を超え、通年ベースの増加率を押し上げた。
業績面も改善しており、2019年6月中間決算では純利益が9500万元と上場以来初めて黒字に転換した。好調な本土株式市場を背景に投資収益が2.3倍の7億5800万元に伸びたことなどが奏功した。
ただ、通期では赤字が続くとの見方が優勢で、ファクトセットがまとめた2019年12月期決算の市場コンセンサス予想では純損失が4億8900万元。前年に計上した17億4400万元から赤字幅が大幅に縮小するものの、通期では黒字転換を果たせないとみられている。
ファクトセットの市場予想では2020年12月期の純利益が2億4400万元で、通期でもようやく黒字に転換するとの見方が濃厚となっている。
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